ヤマベ(ハエ)つり 時速100尾への招待状

このページは、HATの会報「楽しいつり」に連載されていたシリーズを、作者(山辺釣人/ヤマベノツリヒトさん)の許可を得て転載したものです。2011.9月~2013年までの連載です。

ヤマベ釣り・時速100尾への招待状①
このところ、HATには有望な新人が続々と現れているそうだ。ベテラン陣もうかうかしていると足下をすくわれかねない。時速30尾で低目安定している輩、時速50は超えたが…、時速80までもう一息… いろいろな人がいると思う。
そういうヤマベ大好き人間のために、小生の経験で気がついたことを、ざっくばらんに、順不同にあれこれ書き綴ってみよう、というのがこの連載の趣旨である。お役に立てば幸いなり。

コマセワークと3次元釣法 -その1-
コマセ(寄餌)は、この釣りの極めて大事な要素である。使用するのは定番の「メガミックスハエ」と「ハエ競技用まきえ」。どちらもマルキューの製品で、メガミックスは緑色の袋で定価840円、競技用まきえは水色の袋で定価560円。
競技用まきえはもう十五年以上前から使われているが、メガミックスは比較的最近発売されたもの。白いので、水中のコマセの位置が確認しやすい。粒子が細かく、ヤマベの寄りが早いようだ。しかし、高い! したがって、ビンボー人の小生は両方を半分ずつ混ぜて使用しておる。
【編集者注:メガミックスハエは生産中止になったそうです。残念!】
HATやまべ釣愛好会の競技会はだいたい1日6時間の釣り。余裕をみて、両方半袋ずつ、計1袋分作ると間に合う。(予備エサは忘れないように) 作り方は、大きめのバケツ(タライの方が良い)に両方入れて、まず粉の状態でよく混ぜる。水を少しずつ入れながら、よく混ぜて、手で握ると固まり、つぶすとばらばらになる程度に練る。これを前日に作り、コマセバッグに入れて釣場に持って行く。小生は密閉式のコマセバッグだが、そうでない場合はビニール袋に入れて密閉してから車に積んだ方がいい。道中かなり臭うのだ。家で団子状にしてもよいが、中に石を入れたいので、小生は混ぜた状態のまま持って行く。
現地に着く。身支度を整え、その辺の河原に転がっている小石を20個ほど拾ってコマセバッグに入れる。
入釣ポイントを決めたら、自分より竿の長さ分だけ沖合(竿は2.7㍍)に、小石を詰めたこぶし大のマキエを1~2個投入する。流速がある場合は自分より上手に、トロ場なら正面に。そして、コマセが水底に落ち着く位置を確認する。石の多いポイントなら、石の間でコマセが止まるが、砂底などは結構転がって下流に行ってしまう。大事なのは、コマセの位置なので、下流でコマセが止まったなら、自分がそこまで移動する。投入を失敗して、コマセが沖合遠くに入ったら、自分がその位置に近づく。近すぎる場合はそのままでもよいが、少し自分が下がっても良い。見えない? 偏光グラスを掛けて、しっかり見なさい!
 メガミックスの量を増やして、より白くするのも手である。視認、これ大事。必ずコマセの位置を把握することが第1! それと、光は水中で「屈折」する。見た目よりコマセは近くにあるのだ。水深も浅く見える。これも念頭に入れておこう。
さて、仕掛けの投入である。自分の正面(コマセの位置)にエサが落ちるように、アンダースローで。ウキをポチャン!と入れるのではなく、竿をすぐに下ろさず、エサ→オモリ→水中糸→ウキの順番に水中に入るように操作する。要するに、ウキを空中に止めておいてゆっくり下ろしていく。すると、ウキは着水と同時に立った状態になり、最初からアタリが感知できるのだ。

だいたい、魚は上から落ちてくるエサにまず反応を示す。だから、投入時は最大のチャンスなのだ。食い気があるヤマベは、落ちてくるエサを追っかけてくる。すぐにアタリが出る。ほとんど流さないうちに魚を掛ける、これが究極のスピード釣法なのだ。
とはいえ、最初からアタリが出ることはそうはない。コマセに寄るまで多少時間が必要だ。その時は1メートルほど流したらエサ切りをする。これを何度か繰り返すと、落ちて流れてくる赤ネリに反応するヤマベが必ず現れる。赤ネリも、寄餌効果が大なのだ。その位置でアタリが出る→掛ける→続いて投入…その時、少しずつ上流側で誘いを掛け、ヤマベを上流側に誘導する。すると、目の前ポイントでアタリが連発するようになるのだ。ポイントは、自分で作っていく。
誘いの掛け方? 竿操作でウキをちょっと止める→エサがフワッと浮き上がる→ヤマベが飛びつく…という寸法だ。Kさんは、その誘いを小刻みにしょっちゅう掛けている。私は疲れるので、長い止めの誘いを掛ける。誘い方はいろいろ、人生もいろいろ…(この項続く)
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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状②

コマセワークと3次元釣法 -その2-
さて、コマセをまいて、アタリが出るまでどのくらい時間がかかるのだろうか。これは季節によってかなり違う。6月頃~11月頃は、水温が比較的高く、ヤマベの活性も高い。つまり、ヤマベは泳ぎ回っているので、ニオイを嗅ぎつけたらたちまち集まってくる。したがって、第1投目からアタルことも珍しくない。ポイント選びが間違っていなかったことがすぐにわかる。寄りが悪くても、5分以内にはアタリが出る。

5分たってもアタリが出ない?
それはポイント選定が間違っている(エサがちゃんとついていないかも知れんが、そんなボーンヘッドは考慮に入れない!)から、即移動!
12月~3・4月頃は、水温が低下し、ヤマベの動きが鈍いので、なかなか寄ってこない。5分程度は我慢する必要はあるが、それでも10分以上は待たない。魚が動かないなら、こちらから魚の所まで行ってやろうじゃないか。
さて、盛期の話に戻る。活性が高いヤマベの中でも、やはり大きいヤツが泳ぐ力も強いから、まずエサに飛びついてくる。しばらくは釣れ続くが、だんだん型が小さくなり、外道(小バヤ・カワムツ・スゴモロコなど)も多くなる。活性が高いのはヤマベだけではないのだ。30分もすれば、アタリが渋くなって、アタリはあるが針掛かりしない、もしくはアタリが間遠くなる。ここまで50尾~80尾くらい釣れているとまずまず、かな。さあ、どうしましょう。

1.外道が多くなった時
ハヤなどは、ヤマベより泳ぐ力が強い。だから優勢なヤマベが少なくなると、コマセラインにハヤが集まり、赤ネリを食ってくる。ヤマベもまだ周りにいるかも知れない。そこで、流す筋を少し変えてみる。コマセより手前・向こう・上・下…4方向が残っている。今まで流していたラインより10~20㌢手前(向こう)にエサを流す。上下は50㌢~1㍍くらいずらしてみる。
スゴモロコは、低層にいることが多いので、こいつを避けるには少しタナをあげてみるとよい。
カワムツ…これはやっかい。緩い流れの所に多いのだが、ヤマベと同じポイントに集団で集まってくることも。さっさとポイントを変えましょう。

2.ヤマベらしいが、型が悪くなったりカラツンが多くなった時
赤ネリが落ちてくる上層に小型が集まってきて、カラツンが出るようなら、タナを底近くに変えてみる。下には大きめのヤマベが残っている可能性がある。コマセの追い打ち…これも有効だ。但し、梅干し大の小さいのを1個、またはくずしてパラパラとまくのも効果がある。但し、ヤマベの活性を高める程度の量に留めるべき。撒きすぎはNG。

3.ポイント移動
1・2の対策でも駄目だったら、即移動!
良く釣れたなら、似たような流れや水深に、あまり釣れてなければ違う流れに…釣れている人のポイントをよく見て、真似しよう!
コマセを打った点が1次元、その流れる筋・上下左右が2次元、タナ(深さ)を探れば3次元…
これが3次元釣法。仕掛けを落とすスピードやタイミングを変えられれば4次元釣法に進化するのだ。
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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状③

ヤマベ(オイカワ)の生態 -その1-
ヤマベを釣るには、その食性、生息域などの生態を知らないといけない。これまでの釣り経験でかなりのことはわかっているつもりだったが、今回調べてみて、新たなことがいくつかわかり、かなり驚いた。以下、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』(インターネット上の百科事典)より抜粋してご紹介しよう。

まず、「オイカワ」の項目(オイカワとは、ヤマベの標準和名)
★オイカワ(追河)Zacco platypus は、コイ目・コイ科・ダニオ亜科(ラスボラ亜科、ハエジャコ亜科とも)に分類される淡水魚の一種。西日本と東アジアの一部に分布し、分布域ではカワムツやウグイなどと並ぶ身近な魚である。釣りの対象としても人気がある。

オイカワ(ヤマベ・ハエ)

オイカワは成魚になると体長15cmほどで、オスの方がメスより大きい。背中は灰青色、体側から腹側は銀白色で、体側に淡いピンクの横斑が数本入る。三角形の大きな尻びれをもち、特に成体のオスは大きい。背中の背びれの前に黄色の紡錘形の斑点がある。上から見るとカワムツやヌマムツに似るが、各ひれがより大きく広がってみえる。ハスの若魚にもよく似るが、ハスは横から見ると口が大きく、唇が「へ」の字に曲がっているので区別できる。
川の中流域から下流域にかけて生息するが、湖などにも生息する。カワムツなどと分布域が重複するが、オイカワのほうが水流が速く、日当たりのよい場所を好む。またカワムツに比べると水の汚れに強く、河川改修され生活排水が流れこむ都市部の河川にも生息する。食性は草食性の強い雑食性で、藻類や水草、水生昆虫や水面に落ちた小昆虫、小型甲殻類などを食べる。
繁殖期は5月-8月で、この時期のオスは顔が黒く、体側が水色、腹がピンク、尾びれを除く各ひれの前縁が赤という独特の婚姻色を発現し、顔に追星が現れる。川の流れが速い浅瀬に群がり、砂礫の中に産卵する。卵は3日ほどで孵化し、成熟まで2-3年かかる。
★分布
利根川水系と信濃川水系以西の本州各地、四国の吉野川水系、九州に分布し、日本以外では朝鮮半島、中国東部、台湾に分布する。ただし日本ではアユやゲンゴロウブナなど有用魚種に紛れて放流されることにより各地に広がった。近年改修によって多くの河川は流れがより緩やかになり、河床は平坦にされている。水の汚れや河川改修にも順応するオイカワにとって、近年の河川は生息しやすい環境へと変化している。21世紀初頭の時点では東日本、屋久島、徳之島などでも記録される普通種となっている。日本国内の移動で生態系への影響も比較的少ないとはいえ、外来種であることに変わりはない。改修への順応が低いウグイやカマツカなどの魚が減少する中、生息数が増えている。
★生息の研究
川那部浩哉の宇川での研究によるとカワムツとオイカワが両方生息する川では、オイカワが流れの速い「瀬」に出てくるのに対し、カワムツは流れのゆるい川底部分「淵」に追いやられることが知られる。さらにこれにアユが混じると、アユが川の浅瀬部分に生息し、オイカワは流れの中心部分や淵に追いやられ、カワムツは瀬に追い出されアユと瀬で共存する。このことから河川に住むカワムツは、河川が改修され平瀬が増えるとオイカワが増えてカワムツが減ることがわかっており、生態学の例として生物の教科書に載っている。しかし、関東などの一部の河川ではカワムツが増えてオイカワが減るという逆の現象も見られる。これも河川改修等が原因と考えられ、両者の関係には今後も注意すべきである。また、渡辺昌和の越辺川の支流での研究で、オイカワとヌマムツが両方生息する河川が護岸されたり堰が増えたりすると、逆にヌマムツが増えることが判明してきている。またオイカワとヌマムツ・カワムツの交雑個体が発見されている。オイカワとヌマムツの交雑個体を通称オイムツ、同じくカワムツとの交雑個体を通称オイカワムツと呼ぶ。特にオイムツは多数発見されており、埼玉県の越辺川水系の支流などでは、水量減少のためにヌマムツとオイカワの産卵場所が重なり、オイムツが多数出現している。
★名前
ハヤ、ハエ、ハイ(各地・混称)、ハス(淀川流域)、シラハエ、シラバエ、チンマ(近畿地方、北九州)、ヤマベ(関東地方と東北地方の一部)、ジンケン(東北地方の一部)など。
各地に多くの方言呼称があるが、多くの地方でウグイやカワムツなどと一括りに「ハヤ」と呼ばれる。「ヤマベ」はサケ科のヤマメを指すこともあり注意が必要である。淀川流域ではオイカワを「ハス」、ハスを「ケタバス」と呼んで区別している。なお標準和名「オイカワ」は元来婚姻色の出たオスを指す琵琶湖沿岸域での呼称であった。このほかにオスがアカハエ、メスがシラハエとも呼ばれる。
オイカワを初めてヨーロッパに紹介したのは長崎に赴任したドイツ人医師シーボルトで、オイカワの属名”Zacco”は日本語の「雑魚」(ザコ)に由来する。……

えっ? ヌマムツ!?
そこで、「カワムツ」と「ヌマムツ」も調べてみた。

カワムツ
カワムツ(川?)Nipponocypris temminckii は、コイ目・コイ科・ダニオ亜科(ラスボラ亜科、ハエジャコ亜科とも)に分類される淡水魚の一種。西日本と東アジアに分布し、分布域ではオイカワやウグイなどと並んで身近な川魚の一つである。
★特徴
全長は10-15cmほど。オスがメスより大きく、大型のオスでは全長20cmに達し30cm近くなることもある。フナなどに比べると前後に細長い体型をしている。背中は黄褐色で、体側には太い紺色の縦帯がある。背中の背びれの前に黄色の紡錘形の斑点が一つあり、胸びれと腹びれの前縁は黄色である。オイカワと同じく三角形の大きな尻びれをもつ。若魚やメスは体側から腹部にかけて銀白色だが、成体のオスは喉から腹にかけてが赤く、顔に追星がある。上から見るとオイカワに似るが、体に対してひれが小さい。外見はヌマムツによく似ており、2000年頃までヌマムツと同種で扱われていた。
日本では能登半島と天竜川水系以西の本州、四国、九州に分布し、日本以外では朝鮮半島、中国、台湾にも分布する。日本ではアユやゲンゴロウブナなど有用魚種に紛れて放流されることにより、東日本にも分布を広げている。ただしヌマムツやオイカワに比べ、水の汚れや河川改修に弱い。
川や湖沼などに生息するが、オイカワやヌマムツよりも水がきれいで水流が緩い所を好む。岸辺の植物が水面に覆いかぶさったような所に多く、人が近づくとすばやく茂みの陰へ逃げこむ。食性は肉食性が強く、水生昆虫や水面に落下した昆虫、小型甲殻類、小魚などを捕食するが、藻類や水草を食べることもある動物食性の強い雑食性。(…中略…)
2008年には、カワムツとヌマムツがオイカワ属(Zacco)から新属”Nipponocypris”に変更された。種小名”temminckii “は命名者の一人テミンクに因んだ献名である。
2000年頃まではヌマムツと同種と扱われておりヌマムツが「カワムツA型」、カワムツが「カワムツB型」と呼ばれていた。 しかし交雑がないこと、鱗が細かいこと(側線鱗数カワムツ46-55、ヌマムツ53-63)、体側の縦帯や胸びれと腹びれの前縁の違いや、カワムツが河川上中流などに住む流水適応型に対し、ヌマムツは湖や大河川などの緩やかな流れを好む上水適応型である事などから別種とされ、2003年にカワムツA型を和名「ヌマムツ」とする事が決まった。……

ヌマムツ
ヌマムツ(沼?、Nipponocypris sieboldii)とはコイ目・コイ科・ダニオ亜科(ラスボラ亜科、ハエジャコ亜科とも)に分類される淡水魚の一種 。種名”sieboldii”がシーボルトに対する献名となっている。
ヌマムツ
(…後略…)
以前から、カワムツは二種類あるらしい、とは聞いていたが、別種に分類されたことは初耳である。実際、白っぽくて縦帯がかなり黒いムツと、黄色味が強く、縦帯がうすいムツが同じ場所で釣れた経験は何度もあり、A型・B型と認識はしていたが…。ヤマベとの雑種もいるとは…。たまには調べてみるのものだ。
ただし、ウィキペディアは、だれでも書き込め、編集できるタイプの(みんなで作る)百科事典なので、個人的な見解も含まれていることに注意しながら読みましょう。
おっと、釣りの話から脱線したようだ。これを基に、釣りのポイントを考える話は次回…。

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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状④
ヤマベ(オイカワ)の生態 -その2-
ヤマベは、5~8月、砂礫底の浅瀬で産卵する。雄が赤く色づき、追星(顔のブツブツ)が出る頃だ。卵は4~5日で孵化するが、生まれたての仔魚はお腹に卵黄の固まりを持っているので、3~4日は動かず、それを吸収しながら8~9ミリ程度まで成長する。吸収し尽くすとエサを求めて日当たりの良い浅瀬に出てくる。日当たりの良い浅瀬は、藻類やミジンコなど、仔魚の食べ物が豊富にあるのだ。13~14ミリ程度に成長するとかなり活発に泳ぐようになる。水際でよく見かけるサイズだ。まだ泳ぐ力は弱いので、泳ぎ回るうちに、次第に下流に流され、下流部の広い淵(トロ場)で成長していく。体長2~3㌢になり、ウロコも完成した頃、上流に戻っていって、川虫(カゲロウなどの幼虫)や流下物なども食べるようになり、2~3年で成魚となっていく。これがヤマベの大まかなライフサイクルである。
ヤマベに限らず、魚類は変温動物なので、水温の変化はその行動に大きな影響を与える。夏は活発に泳ぎ回って採餌しているが、冬はあまり動かず、餌も採らなくなる。餌の豊富なところが大好きだが、カワウなどがやってくると逃げ込める場所に避難する。したがって、釣りのポイント選定も、様々な要素を考えながら、臨機応変に行う必要があるのだ。

ヤマベ釣りのポイント
ー①基本のポイントー
盛期、だいたい5~10月頃は、餌を求めて活発に動き回っている。この時期は付着藻類(石につくケイソウなど)や動物プランクトン、川虫(カゲロウなど)、流下物(落ちて流れてくるもの、昆虫や小さな種など)をよく食べる。そういうものがたくさんある所はどこか。そう、石が多い、やや流れの速い瀬が大好きなのだ。酸素が十分供給されて日当たりが良い場所の小石には藻がたくさんついているし、川虫は流れてくるし…
ここには比較的大型のヤマベが頑張っている。川虫を食べられる大きさで、流れに負けない遊泳力を持っているからだ。また、石と石の間にいれば、泳ぐ力もそんなに使わなくてすむ。エサを採る時だけがんばればいいのだ。あまり流れが速いと流されてしまうし、流れが遅いと流下物の分け前が減る。
ポイント選び・基本のキ
(1) 砂底より石底
上述の通りで、「ヤマベは石を釣れ!」
(2) 止水やトロ場よりちょっと速い流れ
ある調査によれば、ヤマベは流速10~110㌢/秒の所に生息するそうだ。もちろん、止水にも激流にもヤマベはいるが、止水やトロ場は稚魚サイズが多い。また、夕方以降は、トロ場に移動する成魚も多いそうだ。私たちの釣りの時間帯は、瀬にヤマベが多い。瀬の中でも、小深くなった所、流心の速い流れの脇にある少しゆるくなった所などは好ポイントである。激流でも、かなりの大型がいることがあるので、頭に入れておこう。
(3) 深いトロ場より浅い瀬
水深、これも大事な要素。水深5㌢から数㍍の深場まで、ヤマベは広範囲に生息しているが、ヤマベは浅い瀬を好む傾向が強い。
あまり浅いとウキが流しづらいし、あまり深いと竿が届かない(立ちこめない!)。手返しを考えても、浅い方が回転が速いわけだから、水深20~60㌢くらいが釣りやすいし、ヤマベも多い。

ー②寒い時期のポイントー
気温も水温も下がる1~3月、この時期は大変難しい。ヤマベは越冬体制で、代謝を低くするためにほとんど動かない。それでも、目の前にエサがあると、あまり動かずに食べようとする(いわゆる「居食い」)。また、晴れて気温が上がると、近くまでなら動いて就餌する。では、どこで越冬しているか。深いトロ場、外敵に襲われずにすむようなテトラの中や、暖かい流れの支流筋…あまり多くはない。水深数メートルのトロ場で越冬している場合は、我々はお手上げ。大河川はそういう所が多い。小河川だと、そんな深場はないから、テトラ周りや、ピーヤ(橋桁)周り、護岸近くの深場などが狙い目。晴れて暖かい日は、もっとポイントは広がる。支流の吐き出し近くも候補だ。
しかし、あまり寒い時は、こちらの体もこたえるので、釣りは休みましょう(^_^;)
ー③中間期のポイントー
11~12月、3~5月は、盛期ではないが、その日の天気や水況次第でポイントはかなり変わる。
暖かい日が続いて水温が上がる時や、暖かい雨が降った後などは、盛期の頃のようなポイントも狙える。反対に、水温が下がったり、雨がなく渇水状態になると、厳寒期のようなポイントしかなくなる。
ポイント選び・他の要素
(1) カワウの影響
これは、今いちばん頭の痛い問題だ。
ここで、またちょっと寄り道…
HP:とくしま鳥獣被害対策情報広場(徳島県)より抜粋
カワウはペリカン目ウ科に属する水鳥で、体長80~90センチメートル、体重1.4~2.4キログラム程度に成長します。主に水辺の林にねぐらを取り、内湾を中心とした沿岸部や内陸の湖沼河川で採食します。食性は魚食性であり、水深10メートルくらいまで潜水することができ、1日に300~500グラムの魚を食べます。また、行動範囲が広く、数十キロメートル離れた場所まで採食に行くことがあります。
カワウの個体数は昭和50年代前半には急激に減少しましたが、昭和50年代末頃からは増加に転じ、現在は増加した個体群により内水面における漁業被害が全国に拡大しています。

(1) カワウ食性調査

本調査は、県が実施主体となり、徳島県内水面漁業協同組合連合会に委託して実施されています。吉野川水系で平成16~18年度に捕獲された126羽のカワウは計524尾の魚を補食していました。そのうち最も多く捕食されていた魚種はオイカワ、次はアユで、それぞれ全体の59%及び12%を占めていました(図6)。また,カワウ1羽あたりの最も多い採食尾数は、オイカワ、アユなど計64尾でした。

図⑥ カワウの胃の内容物
(2) カワウ食害防止対策事業
本事業は、徳島県内水面漁業協同組合連合会が実施主体となり、カワウの被害防除・駆除・検討会の開催を行うものです。関係漁協では煙火、爆音機の使用やテグスを張って漁場を囲う等により防除策を実施しています。また、銃器による駆除は吉野川水系、勝浦川水系、那賀川水系及び海部川水系において実施されており、平成16年度以降年間約1千羽が駆除されています。
…(後略)…
いかにヤマベ(オイカワ)がカワウに食われているかがわかる。以前良く釣れたのに、最近はヤマベがほとんどいなくなった川も多い。カワウが食い尽くしてしまうのだ。
カワウが多く飛来する川では、人が少ない時間帯や場所で、集団で追い込み漁をするようだ。そんな川では、カワウが潜りにくい浅場(水深20㌢程度)や、水面に木などが覆い被さっているような場所、テトラなどの障害物が多い場所にヤマベが避難している。アユ漁のシーズン(6~10月頃)だと、アユを放流している漁協は、カワウ対策のロープを張ったり、監視員が常駐している所もある。これは、ヤマベ釣りにもうれしい対策である。また、普段から人が多く出入りする河川敷も、カワウが敬遠する。
結論:カワウ避け→浅場・障害物・人影
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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑤
ポイント選び・他の要素(1)
(2)アユの影響
アユは年魚とも呼ばれ、一年でその一生を終える。秋から初冬にかけて、川の下流域で誕生した稚魚は、そのまま流れに乗って海に下り、沿岸域で動物プランクトンを食べて成長する。早春、 体長6㌢ほどに育ったアユは、川に入り、上流を目指して遡上を始める。遡上したアユは、はじめは肉食性が強く、水生昆虫などを主なエサとしているが、河川中流域まで上ると、草食性が強くなり、石の表面の付着藻類(珪藻/けいそうや藍藻/らんそう等)を食べるようになる。そのエサを効率良く摂るため、アユはナワバリを持ち、縄張りに侵入してきた敵を激しく攻撃し、追い払う。この習性を利用した日本古来の釣りが友釣りである。筆者は友釣りも大好きなので、このまま行くと「友釣りへの招待状」になってしまうので、軌道修正しよう。
アユが攻撃する相手はアユだけではない。同じように付着藻類を食べるヤマベも攻撃対象になる。すると、それまで瀬にいたヤマベは、アユが縄張りを持たないような所に追い払われる。それは、砂地底であったり、トロ場などである。カワムツは動物食が強く、あまり付着藻類を食べないので、アユから攻撃を受けず、逆にトロ場に多くなるヤマベと競合し、瀬に逃げることも多いらしい。したがって、アユが多い河川では、アユの多くなる時期は、ヤマベのポイントは流れの緩いトロ場であったり、それまであまりいなかった石の少ない砂地のポイントも考慮に入れる必要がある。
結論:アユ避けのポイント→トロ場・砂地・アユの少ない河川

(3) スモールマウスバスの影響
日本で繁殖してきたブラックバスは、以前は主としてラージマウスバス(オオクチバス)という種類だったが、最近、これとは別に、スモールマウスバス(コクチバス)が増えてきた。その特徴は、ラージマウスバスより冷水域に生息し、流水でも住めることである。したがって、河川に生息するアユやヤマベも捕食対象になっている。ここ数年、私たちヤマベファンのテリトリー(縄張り!?)の那珂川や久慈川でこのスモールマウスバスが多くなっており、ルアーフィッシングを楽しんでいる人たちも多く見かけるようになった。実際にバスが掛かっている場面もよく見かける。
そういう川でヤマベ釣りをしていると、近くでバシャッという大きな音がして、急にヤマベが食わなくなることが多くなった。寄餌に寄ってきたヤマベの群れを見つけ、スモールマウスがやってきて、ヤマベを補食したのだ。これをどう防ぐか。まだあまり研究していないが、ポイントを移動するほか、スモールマウスが近づけないかなり浅い瀬に狙いを絞ることが考えられる。
(この項続く…)
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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑥
ポイント選び・他の要素(2)
⑷ 人の影響
これはかなり現実的な問題だ。
人の影響、といっても3種類ある。㋐BBQや川遊びに来ている人、㋑他の魚を狙って釣りや漁などをしている人、㋒同じヤマベ釣りをしている人・仲間、である。
㋐BBQや川遊びに来ている人
水際で大騒ぎをするので、当然ヤマベもおびえてしまう。石を投げる子供や、水泳を始める人、いろいろいるが、レジャーに来ているので、大きく言えば我々の同類であり、我慢我慢。そういう人の多い所は避けよう。そこしかポイントがないようだったら、人が近づけない流れの強い場所や対岸などを狙おう。
釣りをしていると、すぐ後ろの川岸まで来て、「釣れてますかぁ」「何を釣っているんですかぁ」「どうやって釣っているんですかぁ」と大声を掛けてくる人も多い。これもかなり釣りに悪影響を及ぼす。静かに釣っているのに、川岸をドタドタ歩く音と震動、大声は水中にも届く。ポイントに人影が映るのも良くない。こういう時は、でも、怒ってはいけない、適当に返事をして(うまくあしらって)早目に退散してもらうか、自分が「釣れないなぁ」とか言いながら逃げていくのが無難だろう。
㋑他の魚を狙って釣りや漁などをしている人
コイを狙って川岸からリール竿を何本も出している人…中には我々が近づくと「あっちに行け」「近づくな」と脅す輩もいる。同じ釣りを楽しんでいるのに、広い場所を一人で独占してかなり頭に来ることが多い。が、ここはぐっと我慢して、その場所は避けよう。
アユ釣りをしている人…友釣り師の中には、「友釣りこそ釣りの王者である」とばかりに、外道のヤマベを釣っていると追い払おうとする鼻持ちならない輩もいる。竿が9㍍もあり、アユのポイントに侵入してくる我々が目障りでしょうがないようだ。アユ師の近くに行ったら、こちらから「ここに入ってもいいですか?」と声を掛けよう。「はい、どうぞ」と言ってくれたら遠慮なく入ろう。「ダメ!」と言われたら退散しよう。
コロガシ釣りをしている人…この人たちは9㍍の竿をブンブン振り回すので、近づくと危ない。おまけに、川底にコロガシ用の針を引っかけてそのまま放置していることも多いので、彼らの入った後は足下にも気をつけよう。コロガシの人が入った後は、ある程度時間が経てばヤマベも戻って来るようだ。
投網をしている人…これもかなり多く見かける。漁業権や遊漁証を持っている人も多いので、我々と同じ立場である。しょうがないから、そういう人の側は避けよう。彼らは同じ場所でずっとやるわけではなく、どんどん移動していくので、しばらくの辛抱である。久慈川などでは、秋になると川に縄を張って「魚止め」を作り、落ち鮎を投網で捕る漁法がある。これは漁協が中心になってやっているので、処置なし。「魚止め」下流50㍍くらいは立ち入らないようにしよう。
ハヤの瀬付き漁をやっている人…「瀬付き漁」とはハヤが産卵する時期(4月~6月頃)に、流れの中にユンボを入れ、人工の産卵場所を作って魚を誘い、網で捕る漁法のことである。ハヤの多い鬼怒川などでよく見かける。幅1~2㍍くらいの水路を作るので、ヤマベにも良さそうに見え、つい入ってしまいそうになるが、この人たちは近くに監視小屋を建てて見張っていて、近づくと血相を変えて飛んでくる。暴力団の資金源となっているという噂もある。怖いので、退散しよう。
㋒同じヤマベ釣りをしている人・仲間
釣り台や脚立などで釣座を固定してヤマベ釣り(など)をしている人たちは、あまり移動しないので、そんなに気にする必要はない。近くに入る時はちょっとあいさつをして入りましょう。(ちょっと前までそういう人だったKさん、Sさんは、最近動き出しました)
我々と同じような道具立てで入釣している人、及びお仲間とは、完全に競合する。お互いに邪魔にならないように、竿2本分くらいは間を空けよう。近くを通る時は、なるべく河原に上がって移動するなど、気を使いましょう。上手な人が釣っているポイントは、よく見て真似をしましょう。また、そういう人が去った後のポイントは「釣りカス」で、活性のある魚はほとんど釣られてしまっている(かな?)ので、アタリが出ない。他にやる場所がない場合は、少し流す筋を変えるとか、その人とは違う釣り方をするとか、相手の上前をはねるテクニックが必要になる。でも、仲間同士なら、とにかく仲良く釣りましょう。(続く)
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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑦
道具・仕掛けの工夫(1)
ここからは、道具や仕掛けのお話。
昨年やまべ釣愛好会年間優勝を遂げた佐近津里彦氏の竿や仕掛けについて、解説していく。

【竿】
シモツケ(大橋漁具KK)の「BSB超小継清滝」270(2.7㍍)をメインに使っている。
渓流用で9本継、仕舞い寸法37㌢、自重36㌘と、渓流用としては軽い竿だ。値段も定価3,400円と格安。
ヤマベ専用の竿としては、各メーカーからいろいろな製品が出ている。3㍍前後の硬調ヤマベ竿を中心に見ると、前記のシモツケからは、「BSBザ・オイカワ」(長さ2.9㍍・自重25㌘・定価12,500円/以下同じ)、宇崎ニッシンからは「ルシード稲穂」(2.7㍍・30㌘・10,000円)、「ロイヤルステージ鼓硬硬調」(2.85㍍・35㌘・18,500円)、ロイヤルステージ春季硬硬調(2.9㍍・30㌘・20,000円)など。ダイワからは「凜風りんふうSR」(3.5㍍・40㌘・16,800円)、がまかつからは「がまはえ凌景」(3.3㍍・40㌘・25,000円)。主なものだけでも、かなりの種類だ。
全体として、1万円前後の専用竿の場合、非常に細身で軽い。「硬硬調」と表示してあっても、それほど硬い調子ではなく、しなやかで、ヤマベが掛かった時によくしなって、バレが少ないようだ。
津里彦氏愛用の「清滝」とは、かなり調子が違うので、要注意。「清滝」の場合、その安さも魅力だが、非常に硬い、というのが特徴だ。もともとヤマベ用ではなく、ヤマメ・イワナなどの渓流釣り(短いので源流用)に適した竿である。
竿を振ってもほとんどぶれないので、振り込みが的確にでき、コントロールしやすい。竿操作も手の動きのまますぐ竿に伝わるので、誘いを掛けやすい。ただ、魚が掛かった時、特に小型のヤマベの場合は竿がしならない分バレやすい、という欠点がある。また、ヤマベ専用竿よりはかなり重いので、長いバージョンは使いづらい(3㍍は44㌘、3.3㍍だと65㌘)というのも難点だ。
欲を言えば、「振り込んで誘うまでは硬調・魚が掛かったらやや軟調」がベストだが、今はそんな竿は売ってない。(昔はリョービの「ハエ軽量」など、非常にいい竿があったのだが…)
軟調・硬調・竿の長さなど、それぞれの竿の特徴を把握した上で、自分の釣り方に合った竿を選ぶとよい。

《竿の扱い方》
竿は、基本的にデリケートなものだ、という認識で、丁寧にやさしく扱うことが大切だ。よく、竿を伸ばして地面において仕掛けを付けている人を見かけるが、もっての外である。振出の竿の場合、砂や土がついたまま伸ばしたり縮めたりすると、中に入ってしまい、継ぎ目の所から簡単に傷ついてしまう。そこから折れたり、割れたりする。竿の素材は薄いのだ。仕掛けをセットする時は、脇にはさみ、穂先だけ伸ばして両手を使って行う。そこから竿を伸ばしていけばよい。途中で仕掛け交換などをする時も、竿を縮めて、同じように脇を使って竿を持っておけば、簡単にできる。津里彦氏の場合は、ビクにパイプがセットしてあり、そこに竿を置けるようになっているのだ。

《竿の手入れ法》
釣りが終わったら、竿をしまうが、水がついている場合は柔らかい布(ウェス、タオルも可)でふきながらしまうのがベスト。それができない時でも、家に帰ったら、尻栓をはずし、1本ずつ取り出して水洗いし、陰干しすると良い。そして日光の当たる場所を避けて保管しておく。車の中に積みっぱなし、はNG。車内の温度は乱高下するので、カーボン繊維などはどんどん劣化する。
こうして、竿に愛情を注げば、使用頻度が高くてもかなりの長期間、使うことができる。津里彦氏は、今の竿をもう3年使っているそうだ。(続く)
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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑧
道具・仕掛けの工夫(2)
【仕掛け①】
仕掛けの話に入ろう。
津里彦氏の仕掛けは、上から天上糸・空中糸・水中糸・ハリスの部品に分かれており、さらにその間に接続する小道具が入っている。上から順に説明していこう。

《天上糸》
天上糸は、竿の穂先と接続する部分で、魚の取り込みや振り込みを何度も繰り返すため、穂先から取れないようにしっかり接続し、かつ穂先と絡まないようにする必要がある。
穂先絡みを防ぐため、やや太目のフロロカーボン(ナイロンでもよい)0.5~0.6号を使う。色つき(イエローなど)だと、視認性が良い。津里彦氏はバリバスのアユ用天上糸を愛用しているようだ。
全長50㌢のうち、上部20㌢を2本ヨリにしている。これも絡みを防ぎ、竿と接触しても滑りやすく、ほどけやすくするためだ。2本ヨリの作り方は簡単。図のように、コヨリを作る要領でねじっていけばよい。
上の方が太くなり、テーパーラインと同じく、むちのようになって振り込みやすくもなる。穂先の蛇口と天上糸の接続は、普通のチチワを使って結ぶ(通称「ぶしょう付け」という)方法でもよいが、最近浅見朗チームリーダーに教わった編み付け接続の方が絡みがすくないようだ。
編み付けは、両方に伸ばすと動かなくなり、縮めると移動できるすぐれた接続方法だ。金属糸とナイロンの接続にもよく使われ、アユ師はこれが得意である。次回は編み付けの方法について書いてみよう。
天上糸の一番下の部分は、2㌢ほど折り返して
結びコブを作っておく。ここに空中糸を接続する。接続部分は摩擦が生じるので、強度を上げるため、ダブルラインにしている。(この項続く)


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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑨

道具・仕掛けの工夫(2)

【仕掛け②】《編み付け》

『編み付け』は、図のように縮めれば自由に動かせるし、両側に引っ張れば固定できる。アユの仕掛けで良く使われる方法で、結び目にすると極端に強度が落ちる金属ラインの接続などで非常に重宝する。場合によって動かしたり固定したりできるので、ヤマベ釣りなどでも大変役に立つ。
 佐近津里彦氏の仕掛けでは3ヶ所に使われている。ヘビ口との接続部分、空中糸の折り返し部分、そしてウキ止め部分である。
3ヶ所の編み付けは、全てフロロカーボン0.4号(赤)を使用。一番上のヘビ口接続用のチチワには10回程度の編み付け。空中糸の下の部分の編み付けは、下から20㌢ほどの所に10回程度編み付け、1~2㌢程度のひげを出し、そこに空中糸を10㌢ほど折り返して止める。折り返し部分には、下にひげ付のマイクロスイベルを通して、そのひげに水中糸を接続する。空中糸の長さを調節できるようにしてあるのは、仕掛け全長を竿の長さに合わせるためで、一番下のオモリが竿尻に来るように微調整するための装置である。
空中糸にはPEライン0.2号を使っているが、PEは糸癖がつきにくく、極細なので折り返してもかさばらず、風などによる膨らみも少ないからだ。

 

 

 

 

 

《編み付けの方法》

これは、説明するのが難しい。実演を見てもらうのが一番だが、「アユ釣り・渓流釣り 結び方図鑑」(つり人社)から図を拝借。

ラインホルダー(自動編み付け器:津里彦氏製作のものが総会などで2,000円ほどで売られている)などで糸をピンと張る。30㌢ほどの編み付け糸を真中で片結びし、2本の編み糸を右手と左手で持ち、下側で交差させ、左右の糸を持ち変える。次に上側で同じように交差させ、左右の糸を持ち変え…を繰り返して行く。上と下で交差させる時に、必ず同じ側の手を前にするか決めておく。数回編み付けたら、最後は片結びし、2本をそろえてゆるく片結び。その糸を両側に開いて結び目を中央に移動させ、固く締めればできあがり。
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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑩

道具・仕掛けの工夫(2)
【仕掛け③】《編み付け式ウキ止めの作り方》
水中糸部分(140㌢)は、ナイロン0.25号を使っている。金属ラインを使ったこともあるが、ここ十年ほどは「ダン岩太郎クラシック」を愛用している。張りが強く、ヨレができにくいナイロン糸だ。ウキ止めはウレタンチューブ・内径0.3㍉を使用。

作製の手順は図の通りだが、

①まずウレタンチューブを1.2㌢に切り、上になる部分(発泡ウキの足を刺す部分)をライターであぶり、少し径を広げる。こうするとウキが刺しやすいのだ。

②ビーズ針に道糸(ナイロン0.25号)を通し、チューブの中程に刺して下から針を抜いて道糸をウレタンチューブに通す。

③下側に通した糸を10センチほど2本ヨリにし、、下部を1.5㌢ほどのチチワにする。2本ヨリ全長6センチ。最下部はガン玉や金属製のハリス止めを装着するため、最も消耗が激しいので、2本ヨリにする。

④編み付け糸はフロロカーボン0.4号、色つきが見やすい。これをビーズ針に通し、ウキ止めチューブの中程に刺す。

⑤刺したビーズ針を下から1~2㍉の所で外に抜き、そのままチューブの下から通していく。

⑥チューブの中程からビーズ針を抜き、編み付け糸を抜く。

⑦チューブの中程から2本の編み付け糸が出るので、ここから編み付けを始める。

ラインホルダー(編み付け器)で道糸をピンと張り、編み付けをしていくが、この時、チューブと編み付け糸が絡まないようにチューブにふとん針を刺して目玉クリップをオモリにすると、編み付けがスムーズにできる。
⑧6回ほど編み付けて完成。編み付けはきつすぎず、ゆるすぎず、スムーズに動いて、伸ばすとしっかり止まるように練習しよう。…(この項続く)

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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑪
道具・仕掛けの工夫(2)
【仕掛け④】《水中糸とハリスの接続部分》
水中糸部分(140㌢)の最下部は、2本ヨリにして、一番下を1㌢ほどのチチワにしている。2本ヨリ部分は6㌢。ここにガン玉を数個つける。2本ヨリにするのは、この部分が最も消耗が激しいからである。ガン玉をつける部分であり、ハリス止めをつける部分でもある。ナイロン糸に金属素材の固い部分が接触する所はよれたり、切れたりのトラブルが多い。それを2本ヨリで防いでいる。
ガン玉は、5+段のウキを使用する場合、上から8号3個、10号1個、最下部は6号1個としている。下だけ重いのは、重心を下の方にして絡みなどのトラブルを避けるためだ。
試合中に、オモリを追加したり、外したりすることもよくある。板オモリを使う人もいるが、私はガン玉で調節している。そのためのミニラジオペンチは必携だ。微調整は、ハサミでガン玉を切って行う。この際、糸を切らないように注意。

水中糸とハリスを接続する部品は、特製の極小ハリス止めだ。
市販品にはないので、自分で作製している。素材はステンレスバネ線φ0.3㍉。14㍉に切り、両端を面取りする。面取り(角を取って丸めること)しないと、そこにナイロン糸が接触すると簡単に切れてしまう。初めに図のような「折曲器
おりまげき
」(これもふとん針で自作)で曲げ、ミニペンチ2本で曲がりを調節していく。折曲器を使って曲げると、ナイロン糸と接触する部分が鈍角になり、力が掛かっても糸が切れない。この部分が鋭角になると、鋭利な刃物と同じで、簡単に糸が切れてしまう。
ホッチキスを使って作る方法もあるが、この鋭角問題が発生するので、あらかじめ太目の糸をはさみながら折り曲げるといいだろう。(続く)
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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑫
道具・仕掛けの工夫(2)
【仕掛け⑤】《ハリスとハリ》
さて、仕掛けの最下部はハリスとハリである。
ハリスは、佐近津里彦氏の場合、ダンの「岩太郎クラシック」0.2号を使っている。水中糸に使っているのが同じ岩太郎クラシックの0.25号なので、それより一回り細い0.2号を使う。メーカーや種類が違う糸では、同じ号数でも強度が違ってくるので、要注意。万一の時、ハリスだけが切れて水中糸は無事であることが望ましい。
て、ハリスの長さは、きちんとそろえておいた方が良い。6㌢なら、ハリス交換しても同じ6㌢であるべきだ。ハリスの長さが1㌢違うと、エサの動き方や魚の食い込み方が変わる。よって、長さをそろえたハリスを1㌢刻みで何種類か用意した方が良い。津里彦氏は6㌢、7㌢、5㌢を主に使用している。

ハリスの長さをそろえる方法は、硬くてうすい段ボールなどの厚紙を、まず6㌢の長さに切って台紙とする。ハリを下に掛け、糸をピンと張った状態で上側で段ボールに沿って折り曲げる。そのまま二重になったハリス部分をつまんでチチワを作る。すると、何回作っても6㌢(針先からチチワまでの長さ)になるのだ。
「ハリス掛け」は、これまた自作である。厚さ1㍉の低発泡塩ビ板を台として使う。この素材はハサミで簡単に切ることができ、加工しやすいのだ。その上にビブラムスポンジを貼り付ける。ビブラムはイタリアの有名な登山靴メーカーで、この靴底用のスポンジは、切れ目を入れて0.2号のハリスをはさんでおけば、ハリスが傷つくこともなく、ゆるむこともない絶好の素材なのだ。津里彦氏は東急ハンズで見つけたらしい。このハリスケースにチチワの上部を少しだけ(3~4㍉ほど)出して固定しておく。ハリス交換の際、例の極小ハリス止めに、出ているチチワを掛けてからハリスを台から外せば、簡単に交換できる。

ハリは基本的にはカツイチの「プロハエネリ2号」を使う。ミニサイズが多いときはがまかつのタナゴ針「極小」の返しをつぶしたものも使用するが、このハリはちょっと型がいいヤマベはバレることが多いので要注意。
浅見朗氏は、同じくプロハエネリの2号、2.5号、がまかつの「秋田キツネスレ」1号を使用。ハリスはダン岩太郎クラシック0.2号6㌢。
小林竜明氏は、プロハエネリ2号のみを使用。ハリスは同じく岩太郎クラシック0.175号8.5㌢。
お二人は、水中糸に金属ラインを使用している。金属ラインは比重が大きく、直線の引っ張り強度は非常に強い。重いので沈みが速く、強風の時などには風の抵抗にも強い。ただ、折れたり、摩擦がかかったりすると簡単に切れてしまうので、仕掛け作りはかなりテクニックが必要。さばきも大変難しい。興味のある方はご本人に聞いてみて下さい。(続く)
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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑬

エサのお話⑴
 早いもので、この連載も13回目になる。ということは、1年が過ぎたということだ。そろそろネタも尽きてきたので、連載を終わりにしたいところだが・・・。
 さて、仕掛けの話は大体終わったので、仕掛け先端の針につけるエサの話に入ろう。

 最近入会した会員や、他の会からも問い合せがあるので、「赤ネリ」の基本的な作り方をおさらいしよう。素材はマルキューの「ハエネリ」(分包3袋入り)と「本みりん」だけである。
密閉できる容器に本みりんを10㏄ほど入れ、ハエネリ1袋(以上)を加えて、よく練る。画材屋や100円ショップなどで手に入る「パレットナイフ」を使うと練りやすい。

パレットの先につけて非常にゆっくり垂れる程度に練ったら、密閉して、冷暗所に保存する。冷蔵庫はよくない、水分が飛ぶから。よく混ぜても、粉全体がミリンに馴染むまでには時間がかかる。翌日、再度練ってみると、かなり違うタッチになっているものだ。柔らかさに応じて粉を足したり、ミリンを足したりして調整する。これを1週間ほど続ければ、大体できあがり。釣行前日まで冷暗所に保管しておく。釣行前日に、ポンプに詰めておくとよいが、その時に最終的な調整をしてもよい。硬さ・柔らかさは好みによるので、人によってかなり違う。佐近津里彦氏はやや硬め、小林竜明氏はかなり軟らかめ。小林氏は針先から垂れるくらいでもよいという。重要なのは粘度。柔らかくても粘りがあればエサは落ちない。振り込みはやや難しくなるが。「硬い」といっても、ポロポロになっているのはダメで、これは水分が飛んでいる証拠、振り込むたびにエサが落ちてしまう。硬いが粘りけがあるエサ、これは針にもつけやすいし、振り込みやすく、アタリも出やすい。これを目標にエサ作りをしよう。(この項続く)
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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑭
エサのお話⑵
さて、エサとハリの関係である。我々のスピード釣法では、「赤ネリ」をニードルでハリにつけるわけだが、ハリのどの位置にどのくらいの大きさでつけるか、はかなり重要な問題だ。図②のような位置に球状につけるのが理想的だが、実際は球状にはならずに、図④のようにつくのが普通だ。

図③のようなつけ方はNG。ヤマベがエサと針先を同時に吸い込んでくれないと針掛かりしないのだ。

魚の大きさによっても、針掛かりの率はかなり違う。図⑤と図⑥を比べると、同じ大きさのエサでも、小さい魚だと針先まで飲み込めない。口が小さく、飲み込む力も弱いのだ。図⑥のように、魚の大きさが1.5倍になると、楽々針先まで飲み込むようになる。小さい魚が多いときは、図①のように、赤ネリをこぢんまりと針先だけにつけるようにするとよい。エサの出し方とニードルの位置を工夫すれば、小さいエサでも針先だけにきちんとつけられる。

アタリがあっても針掛かりしない、いわゆる「カラツン」は、図⑤や図⑦のようにエサの先だけ食われる状態だと想像できる。図②のような大きめのエサほどエサが垂れやすく、図⑦の状態になりやすい。しかし、集魚効果は大きいので、釣り始めからしばらくは大きめのエサをつけるとよい。水中でエサが少しずつ流れて、魚を集めると同時に、図⑧のように針先に少し残っているだけのエサになっても、腹すかしのヤマベ君はハリごと飲み込んでくれるのだ。(続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑮

オモリバランスとアタリ(1)
エサを食うとアタリがウキに出る…というわけで、今回はウキに出るアタリのお話。

ウキは主に、仕掛けを安定的に流す役割と、つり人が魚信を感じ取る手段としての役割がある。また、オモリは、仕掛けを水中に沈めて安定させる役割と、仕掛けを飛ばす役割がある。あまり軽いと、仕掛けを振り込めないのだ。風が強いときは特に仕掛けを一定の位置に振り込むのが難しくなり、「重さ」は大事な要素になる。

ウキとオモリの関係で大事なことは「オモリバランス」だ。ヘラブナ釣りではこれが非常に大きな要素になる。ヤマベ釣りでも、かなり大事なことだ。ヤマベに抵抗感なくエサを吸い込んでもらうためには、できるだけ抵抗が少ない方が良い。水面に出るウキの部分が少ないほど、仕掛けを引き込む力は少なくて済むから、ヤマベはエサを食べやすい。下の①より、②の方が食い込みがいい。

【押しの強い場所では】ただ、流れが速かったり強かったりすると、ウキがどんどん沈んでいってしまうのでアタリがわかりにくい。そういうときは①の方がいいだろう。また、そういうポイントにいるヤマベは、流れに負けない体力を持っている中・大型が多いので、エサを吸い込む力も強いい。ウキのトップ下が少し出ていても食い込みがよく、また流れの強さでウキの動きも大きくなる。

【流れの弱いトロ場では】トロ場には、小型のヤマベも多く、エサを吸い込もうとしても抵抗が大きいとすぐエサを離してしまう。カラツンが出やすいのもトロ場だ。こういう場所では、なるべくウキの肩を完全に沈めるようなバランスが大事だ。図②のようにオモリバランスを調節する。ただ、現場でオモリをつけたり外したりするのは難しいかも知れない。そういうときは、よりオモリ負荷の小さいウキに換えればよい。

それでも食い込みが悪い場合は、③のような「シモリ釣法」も有効だ。オモリバランスを、ウキが次第に沈んでいくように調節する。ヤマベがいるような川は、かなり透明度が高い。また、トロ場なら水面の波立ちも弱く、水中に沈んだウキもある程度までは見える。ウキ全体が水中にあるので、食い込みはかなり良く、アタリもはっきりと出ることが多い。ヤマベが食うタナを探すのにも、これは有効だ。トロ場では、かなり上層までヤマベがいるが、上の方に超ミニサイズがいて、下の方に少し大きめのヤマベがいることも多い。最初の小さなアタリをパスして、沈んでいく途中の力強いアタリを確実に取る方法もあるのだ。(続く)
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ヤマベ釣り・時速100尾への招待状⑯
…いよいよ最終回…

オモリバランスとアタリ(2)

さて、ヤマベがエサを針ごとくわえてくれたら、エサが吸い込まれることでハリスが引っ張られ、水中糸に伝わり、ウキが動く。それをつり人が目視で感じ取り、合わせに入るわけだ。

そのウキに出る動き=アタリ(魚信)には、いろいろなパターンがある。

普通に皆が期待しているのは、ウキがスッと沈む、いわゆる「ツン」アタリである。最もわかりやすいアタリだが、それもウキ全体が沈む大きなアタリだけではなく、ウキが一目盛分(3~5㍉程度)力強く沈む、小さいツンもある。特に、流れが弱いトロ場などでは、小さいアタリしか出ないことが多い。

ウキは沈まないが、ウキの角度が変わるアタリもある。「横ぶれ」だ。ヤマベが横に泳ぎながら吸い込むイメージだ。角度が変わるだけなのでわかりにくいかも知れないが、立派な「アタリ」であり、掛かりも良い。

ウキが少し持ち上がる「食い上げ」アタリもよくある。ちょっとしか持ち上がらないことも多く、慣れないと見逃すかも知れない。ウキが立つと同時に食い上げると、ウキのバランスが変わった、と思うかも知れないが、「アタリ」なのだ。

他にも、ウキは全く動かない(沈みも横ぶれも食い上げもない状態)が、流れ方が遅くなったり、流れる方向が少し変わったりするアタリもある。

要するに、ウキの状態が少しでも変化したら、それは「アタリ」が出ているわけだから、軽く合わせてみると良い。要するに「変だな」という違和感を感じたらアタリと思っていい。特に初心者・初級者は、「沈む」のがアタリ、という先入観を捨て、ウキの変化をよく見ることが肝要である。

エピローグ

さて、この連載も16回目になった。「時速100尾」を可能にする大事なポイントは大体公開したつもりである。あとは練習あるのみ…HATには名手が何人もおり、彼らの釣りをよく見たり、いろいろと聞いてみることもできるので、熱意さえあれば、かなり早く上達できるはずだ。

まずは自分の現在の釣技を冷静に分析し、時速30尾(1日2束以下)が限度なら、次の段階…時速50尾(1日3束)を目指そう。それがクリアできたら、次は時速70尾(1日4束)→80尾(1日5束)…と目標を上げていけば、時速100尾(1日6束)への道も開けるだろう。

上級者の皆さんもより高みを目指して、頑張ってほしい。大一束(1000尾)超え…これは1日6時間の釣果としては、おそらく日本記録に近いと思われる。10年以上前になるが、あの伝説の日本一のヤマベ釣り軍団「レインボージェット・ヤマベチーム」(1986年結成、2001年解散)では、1000尾超を果たした人が7人いる。ただ、実釣時間は7~8時間なので、単純には比較できないが。レインボーの会員だったHATの浅見朗選手が1回、小林竜明選手と佐近津里彦選手は2回達成している(いずれも鏑川/群馬県)。日本のヤマベ釣界でも、1000尾超を達成した経験のある人はおそらく20人もいないだろう。一つの目安として、6時間1200尾を超えれば、日本記録(世界記録?)としてギネス申請したらどうだろうか。

因みに、HATの公式記録では、佐近津里彦選手の947尾(2009.10.4/山田川)が6時間の最高釣果。現在でも山田川なら1000尾超の可能性がある。いつまでも向上心を持ってヤマベ釣りを楽しもうではないか。

駄文に長いことお付き合いいただき、ありがとう。また機会があったら、お目にかかろう。

(取材協力:浅見朗さん、小林竜明さん、佐近津里彦さん/ありがとうございました)
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